タヒボの生育に不可欠な豊かな自然

地球上の長い歴史の中で形成された生物の多様さと自然の営みの豊かさを生物の多様性といいます。有用樹木タヒボは世界でも最も豊かな多様さを持つアマゾンの自然によって生み出されます。
生物の多様性は遺伝子・種・生態系の3つのレベルを包括し、これら全てのレベルは人間の命と健康に直接関係します。

  • 遺伝子のレベル---は食料の増産や病気に強い品種に開発や新薬の開発など遺伝子の供給源としての価値を持つ。
  • 種のレベル---タヒボが先住民によって太古より長い間利用されてきたように、私たちは食料・燃料・建材・衣類・医療品・香料など資源として利用することにより生活や生命を維持してきました。病気になった時にお世話になる医薬品のおよそ40%が天然物由来の物質を原料とします。内訳は、植物24%、微生物13%、動物3%で、植物由来の医薬品の多くのものがアマゾン川流域から見出されたものです。
  • 生態系のレベル---生態系の生産力・保水力・土壌浸食の防止や地球環境の維持の働きをします。

タヒボと熱帯に分布する生物

タヒボの大木生物の種の多さは熱帯地方に近づくほど高くなり、地球上の7%の面積に50%の生物種が存在します。
地球上には3大熱帯と呼ばれる3つの大きな熱帯雨林のブロックが存在し、それぞれに多様な生物が生息しています。それらの中で最も広大で高い多様さを見せるのは、タヒボが自生するアマゾン、オリノコ川流域を中心としたメキシコ以南の中南米で、約800万平方Kmに半分以上の9万種以上が分布します。第二のブロックは東南アジアを中心としたニユーギニア、オーストラリアにまでおよぶ地域450万平方Kmに4万種が分布します。最後はアフリカブロックで、サハラ砂漠以南、中央アフリカから西アフリカにかけてコンゴ川流域の360万平方Kmに3万5千種が分布します。
最も広い中南米地域の中でも、タヒボのふるさとアマゾン川流域は「広さ、生物の種類の多さ」ともに突出しており、約600万平方Kmの熱帯雨林が広がり世界の約25%にあたる6万種以上の高等植物が分布します。薬用になるものだけでも5000種類以上あると言われます。中国最古の本草書といわれる「神農本草書」(紀元5世紀頃)の中には365種の植物由来の漢方生薬の解説がありますが、これに比べて桁違いに多いことが分かります。ちなみに森林としては歴史の浅いヒマラヤ地方に分布する高等植物は約7000種、亜寒帯から亜熱帯まで幅広い気候を持つ日本列島には5565種の存在が確認されております。

生物絶滅の危機

地球上に生物が誕生して以来、急速な種分化の時代、緩慢な分化の時代、大絶滅の時代を経て、生物の種は増え続けました。
恐竜の絶滅や、過去に数回の絶滅の時代があったものの、速度はゆっくりで、新種が誕生する速度と釣り合っていました。しかし現在の絶滅の速度は新種誕生速度を上回り、急速なスピードで生物が絶滅の危機に瀕しています。
過去の絶滅は自然現象による環境変化が原因でしたが、現在は人間の活動が直接的原因と考えられます。 新種が誕生するまでには数万年を要するとも考えられており、現在、膨大な数の種がわずか数十年で失われたことを考えると、それと釣り合うだけの新種誕生は期待出来ません。
地域別では熱帯雨林、温帯雨林、熱帯乾燥林、ウェットランド、温帯草原、マングローブ、珊瑚礁が現在消失の危機にあります。 中でもタヒボを育む熱帯雨林の消失は著しく、そこに生息する生物20パーセントが失われるという予測もあります。

多様な天然資源を守る努力

1992年リオデジャネイロで180カ国が参加し開催された国連環境会議で地球温暖化を防ぐために対策を講じようという「気候変動枠組条約」と地球に共存する生物種を保護しようという「生物多様性条約」の二つの条約が生まれます。
この国際会議で有用生物に関する知識の「知的所有権」についての議論がなされ、会議の中で「天然資源」特に「熱帯雨林で発見される資源から得られる利益を、どのように配分するか」といった事項に時間が割かれ、最終的に出席者のほとんどが、そうした利益の一部を「原産国と有用資源の発見者に還元するための法的枠組みを作らなければならない」ということで合意した。生物多様性条約に規定された国家の天然資源に対する主権的権利を侵さない方法で先住民の知識を新薬の開発に役立て利益の一部を先住民に還元して、自立、持続性を守ろうとする活動もあります。民族植物学者のMark J. Plotkin博士は、長期にわたり単独でアマゾンのシャーマンの元で彼らの知識を学びましたが、現在、大企業、NGO、NPOを巻き込み「シャーマンに弟子をつけ、有用生物の知識を継承しよう」とする動きへと広がりも見られます。

遺伝子資源、二次林の調査

 アマゾン川河口に位置する都市ベレン市から約50kmに位置する群馬の森は540haの林で、全体のうち500haが30〜40年前に伐採され再生した熱帯雨林の二次林である。森の20haがエミリオ・ゲルジ博物館によって調査されました。 調査の結果、15haが高台の森林、2haが湿地、2haがガポエアと呼ばれ、伐採される度に出来る再生林、残り1haが低地林で総木本数159,954本 82属 536種の樹種が確認された。中には人間に役立つ植物も63種も確認されます。
本来の熱帯雨林比較すると樹種の数は少ないが、都市近郊の再生後数十年の二次林であるということを考慮し同じ条件の他の場所と比べた場合、その多様性を確認することが出来ます。


アマゾンの熱帯雨林